本研究は、外国語(日本語)学習の中級移行段階に焦点を当て、読解を支援する指導の効果を調べることと学習者の読解の特徴を明らかにすることを目的とし、実験及びアイカメラでの調査を行ったものである。 実験では、被験者を等質な2つのグループに分け、4日間の読解の指導を行った。文章理解及び処理を促すための二種類の処遇((1)文の前半部を読み、文の終わりの部分の言葉又は内容を予測させる練習、(2)文の構造に留意し、意味及び構造上の区切れに印をつけさせる練習)を用意し、各々の処遇の前後に事前テスト及び事後テストを行い、各処遇の効果を調べた。また、全体の効果を調べるために、実験期間の最初と最後にも読解テストを実施した。その結果、各々処遇については有意な変化は見られなかったが、実験全体として被験者の読解力に有意な伸びが見られた。アンケート結果においては、(1)の処遇は88%、(2)の処遇は62%の被験者が役に立つと考えていることがわかった。また、文章読解後、自由再生の形式での記憶された内容の記述から、読解力が低い被験者の場合、文章の前半部の内容の方が記憶に残る傾向があること、全体としての記憶量が少ないこと等の点が示された。この実験では、実験処遇時間が短いため、個々の指導法の効果がすぐ顕在化されてこないこと、処遇の効果と文章読解練習の積み重ねの効果の両方が実験全体の効果に関係していること等が考えられるが、今後の課題として、さらに両処遇の効果を詳細に調べることが挙げられる。 アイカメラによる文章読解における眼球運動の測定においては、文章を読み進む際、個々の単語を追いながら読み、未知の単語の部分で停留する傾向が見られ、逆行はあまり起こっていないこと、漢字系学習者は漢字により注目して読み進む傾向があることが示された。
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