研究概要 |
ベータ2項分布の形状母数に対するブートストラップ信頼区間について,モンテカルロシミュレーションにより数値的に検討した.モンテカルロシミュレーションにより,標本の大きさが10〜20程度の小標本の場合は,パーセンタイル-t法よりBCa法が公称の信頼度に近い信頼度が得られることがわかった.それは,パーセンタイル-t法に用いられる分散の推定量の変動係数が小標本では著しく大きいことが原因であることが判明した.また,BCa法で用いられるバイアスと歪度の推定量は母数の変化に対して安定であることがわかり,BCa法が有効であることが裏付けられた.標本の大きさが30を越えるとパーセンタイル-t法もBCa法と同様,漸近理論に裏付けられるような高い精度を持つことも数値的に明らかになった.さらに,BCa法を動気づける正規変換が,分布関数に基づく局所正規化変換から構成できることがわかり,その局所正規化変換を平方根で近似して得られた簡単な変換が高い精度を持つことが,シミュレーションより確認された.こうして得られた正規化変換は,標本の大きさごとに求める必要があるため,標本の大きさも含めた簡単な関数系で表現することが,今後の課題の1つである.パーセンタイル-t法とBCa法は1次のエッジワ-ス展開と同程度の精度を持つとされているが,ベータ2項分布において,1次のエッジワ-ス展開に基づく信頼区間がどの程度の精度を持つかも検討した.その結果,標本の大きさが50以下の時は精度が悪く,漸近理論の限界が中くらいの標本の大きさの場合にさえ現れることがわかった.
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