本研究では、打切り例を含む生存時間データを比例ハザードモデルで解析する際の説明能力係数を新しく定義して、その臨床試験データへの適用を試みた。説明能力係数とは、与えられた予後規定因子が生存時間のばらつきをどの程度説明しているのか推定するための統計量である。生存時間データは、重回帰分析データとは異なり「打切り」時間を死亡時間と同等に扱うことができない。従って、重回帰モデルにおける重相関係数の定義を説明能力係数として直接採用することができない。我々は、重相関係数を導出するプロセスに漸近理論を組み合わせることにより比例ハザードモデルにおける説明能力係数を定義した。 新たに定義された説明能力係数を、日本で行われたいくつかのがん臨床試験データに応用することにより宿主因子、腫瘍因子、治療因子の説明能力の程度を検討する。これらの研究の結果、治療因子の説明能力があまり高くない場合には、治療法に一層の改善が示唆されることになる。
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