研究概要 |
LANやワークステーションを用いて構成された分散処理環境が広く普及しつつある.それに伴い,分散したデータを複数ユーザが共有すると共に,ユーザ同士の処理を協調させながら情報処理を行なうことを支援する分散オペレーティングシステムの開発が重要な研究課題となっている.研究代表者らは,そのような分散オペレーティングシステムの一つとして,分散共有格納庫(Distributed Shared Repository,以下DSR)システムの設計と現実を行なっている.DSRシステムでは,分散処理環境において,仮想記憶上の揮発的情報セグメントと二次元記憶上の永続的情報セグメントの両方を統一的に管理する.DSRの情報管理は,従来の分散ファイナルシステムの概念に,記憶管理とスレッド管理の概念を結合したものになっている.また,従来の集中型OSと対比させた場合,DSRの情報管理は,セグメンテーションによる情報管理技術を分散処理環境に拡張したものになっている. 本研究では,DSRシステムにおいて,セグメンテーションによる情報管理とページングによる仮想記憶管理とを結合する研究を行なった.具体的には,サーバ・サイトの二次記憶装置上に保管されているメモリセグメントをクライアント・サイトの仮想記憶空間に遠隔的にメモリマップする技術を開発した.DSRシステムでは,ファイルシステムの記憶空間から仮想記憶空間へのメモリセグメントのロード,および逆方向のアンロードが繰り返し行われるという特徴がある.これを実現するために,メモリセグメントを構成するプログラムコード,ヒ-プ,そしてスタックを繰り返し的に再配置する機能が必要である.この繰り返し的な再配置を遠隔メモリマップの枠組みで効率的に実現する方法について設計と実現を行なった.実現したシステムを用いてメモリセグメントのロードおよびアンロードの性能を調べる実験を行い,設計通り効率的な実装が行われているを確認した.
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