オブジェクトの堆積は、継承機能を必要としないオブジェクト指向システムを構造化するために研究代表者が考案したモデルである。このモデルの特徴は、複数のオブジェクトの層を作ることで、それらのオブジェクトの持つ機能を統合する点にある。分散型オペレーティング・システムにおける高機能ファイル・システムの構築において、堆積モデルの有効性を確認している。本研究では、オブジェクトの堆積モデルの考え方をウィンドウ・システムに適用するために拡張し、オブジェクトの連結モデルを提案した。オブジェクトの堆積では、上位層のオブジェクトが下位層のオブジェクトを呼び出すことができるが、逆方向はできなかった。本研究では、オブジェクトの堆積モデルを2つ組にすることで、オブジェクト間の相互呼び出しを可能にした。 本研究では、既存のウィンドウ・システムであるXウィンドウ・システム上で、プロトタイプの開発を行った。オブジェクトの堆積、および、オブジェクトの連結では、オブジェクトのインタフェースが重要となる。本研究では、単純なXプロトコル・レベルのオブジェクトに加えて、新たにウイジェット・レベルのオブジェクトを導入した。この時、下位層から上位層への要求を処理するために、パートナ・オブジェクトの概念を導入した。パートナ・オブジェクトは、ウイジェット・オブジェクトと1対1に対応する、クライアント・プロセス内にあるオブジェクトである。オブジェクトの連結に基づくウインドウ・システムでは、連結可能オブジェクト、すなわち、ウイジェット・オブジェクトとパートナ・オブジェクトという2つのインタフェースを持つオブジェクトを接続することで、高度な機能を提供する。 今後は、ファイル・システムに対する連結モデルの適用について研究を進めたい。
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