研究概要 |
1.本研究の目的は,数年来,継続して研究しているデンプスター・シェイファー(D-S)の証拠理論に基づく信念形成システムに,自律的な知識獲得の能力を与えるための証拠に基づくプランニングの基礎理論を確立し,かつ,その有効性を確認するために画像検索システムにおける質問の明確化に応用することであった.2.知識獲得のためのプランニング理論に関しては,以下の3段階で研究を進めた.(1)証拠の型の分類:証拠を前年度奨励研究(A)で探究した知識獲得のための諸条件(知識条件と呼ぶ)に照らして分類の上,各証拠の型が満たさない知識条件を対応付けた.(2)証拠の型に対する知識獲得条件の整理:証拠の各型に対して、新たな証拠の獲得のし易さを情報量の観点から定量化し,各型が満たす複数の知識条件に順序関係を与えることに成功した.その結果,システムはこの順序付けに従って次に必要な証拠の候補を示唆することが可能となった.(3)プランニングのアルゴリズムを定式化した.3.画像検索システムについて,そのプロトタイプシステムは科研費で購入したパソコン上に構築した.しかし,D-S理論の欠点が計算量であることは広く知られており,この点は画像検索では致命的であった.よって,今回,構築したシステムでは線画レベルの画像に限定し,画像データは本学学生の協力によって作成した.本システムであいまいな質問を証拠とみなして,そのあいまいさを減じるために必要な証拠を逆算し,ユーザに提示することで、ユーザの質問を明確化できることが直観的にわかったが,定量的評価については現在,更に検討中である。なお,計算量の問題はD-S理論に基づく推論に遺伝的アルゴリズムを自然に適用できることが分かっので,計算時間の短縮が期待できる.尚,本観点の文献検索における質問の明確化への応用は既に研究に着手しており,この4月に米国における国際学会で発表する予定である.
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