本研究では、言語と色彩の認知機能に障害を持つ精神病患者、特に分裂病患者の認知機能を定量的に計測する手法を開発した。本測定手法は、音刺激を与えることで感情を喚起し、その感情を色の選択で表現してもらうことを基本とする。音刺激の内容として、知覚的及び抽象的意味を持った言語(単語)として30個の形容詞を用いた。選択対象の色として、水平方向に連続的に変化する可視光線のスペクトルを用いた。測定値として反応時間とスペクトル上の座標を用いた。この測定をコンピュータを用いて自動的に行なうシステムを、パーソナルコンピュータ上に開発した。本システムは医療現場での利用を考慮して、取り扱いが容易なMacintoshパーソナルコンピュータ上で開発した。開発のプラットホームとして、音声やカラーグラッフィクス、タイマを統一的に管理するために、Hypercardを利用した。 同システムを用いて健常者を対象として測定した結果をミネソタ多面人格目録による指標と比較したところ、両者には相関があることが確認された。特に、反応時間の測定において、従来の方法では測定困難である精度で測定が可能となった。このシステムを診療現場で試用し、この際に得られた結果をもとに、精神科の医師の意見を踏まえた上で、画面表示やユーザインタフェースに関する改良を行った。これらの結果から、本研究で開発したシステムは、認知・感覚系統の障害の程度を客観的に評価することにより、症状の評価や進行状態を客観的尺度により測定することが可能であると考えられる。
|