本研究では、具象空間内に存在する対象の属性の形容に用いられる空間的な量をあらわす形容詞(計算機用日本語基本形容詞辞書IPAL中、意味分類として「空間的広がり;量」をもつとされているもの16個、反義語毎にペアにすると8対)について、典型的な論理的記号表現だけでは表すことができないような対象世界の状況を、実際に計算機上にモデルを構築し、可視化を試みることによってその定式化を行なった。主な研究成果は以下の通りである。 1.形容詞表現と関連する空間的属性の分析 形容詞表現が記述対象のどのような空間的属性に影響を与えるかについて分析し、(1)対象の位置に関するもの、(2)対象の寸法に関するものに分類した。 2.形容詞及び対象名詞の定式化 1.で分類したそれぞれの場合について、幾何的モデルにおける空間的な量との対応をもとにして、形容詞、名詞双方の定式化を行なった。この際に対象に関する知識として、(1)基準的な見方、(2)機能、(3)可動性が鍵となるという知見を得た。 3.空間イメージモデルのプロトタイプの作成と可視化に関する実験 2.で行なった定式化をもとに、形容詞表現の可視化実験を行ない、小規模な実験ながら手法の妥当性を示した。 今後は、より具体的なタスクとして以下を設定し、研究を発展させていくことを計画している。 (1)指示対象の同定 例えば、「高いビル」といわれた場合に幾何的モデルの中からそれに合うものを探す。 (2)指示通りの変形 例えば、「そのビルは高い」といわれた場合に指示に合うように対象を変化させる。 (3)質問への応答 例えば、「そのビルは高いか」ときかれた場合に判断を下す。
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