高精度な手書き文字認識システムを構築するにあたって、「冶」と「治」、「ぱ」と「ば」のような類似文字をいかに高精度に認識するかが大変重要な問題である。類似文字の認識精度を高めるため、従来から、様々な方法は提案されているものの、顕著な効果は得られていない。 人間が類似文字を常に正しく認識できる原因の1つに文字の部分パターンの情報を有効に利用している点が挙げられる。例えば、類似文字「冶」と「治」に対する区別は文字の左側の偏の部分を見分けることによって正しく行なわれていると考えられる。そこで、本研究では、このような認識方式を認識システムに導入し、認識精度の高い部分パターンの自動学習を利用した認識手法を考案した。 当初の研究計画、方法に従って、以下の研究成果が得られた。 1.文字認識システムにおいて、提案手法により類似文字の部分パターンの自動学習が可能になった。 2.提案方法は従来の手法に比べ、認識に必要な部分領域の抽出が高信頼性なものになった。 3.提案方法を文字認識システムに適用した結果、類似文字間で誤認識が最も多発している100字種について、平均4.53%の改善が見られ、本提案法の有効性が実証された。 4.本研究の成果をまとめた論文は、平成7年の電子情報通信学会論文誌に掲載される予定である。
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