発話動機のモデルを導入することによって、昨年度までに開発した次発話予測メカニズムを高度化した。 1.質問者と回答者の役割を想定した模擬対話を収録し、各発話における動機を解析した。その結果、発話の動機が、「情報伝達レベル」および「問題解決レベル」の二種類の異なる動機から構成されていることを明らかにした。前者は、「得られた情報曖昧である」など、対話において授受された情報の状態に関する動機で、後者は、「比較したい」などのように、対話において授受した情報の利用に関する動機である。模擬対話の分析に基づいて、情報伝達レベルの動機および問題解決レベルの動機をそれぞれ8種類、10種類に分類した。 2.対話領域において授受される情報を「行為列」と「オブジェクト」という二種類の情報パケットを用いて表現することによって、対話の進行にともなって変化する情報授受の状態を管理する手法を提案した。 3.情報パケットによる情報授受の管理と発話動機のモデルに基づいて、次発話における話題を予測するメカニズムを開発した。地理案内およびスキー予約の二つのタスクでの模擬対話を用いて、二つのレベルを組み合わせた発話動機の頻度を調べることによって、情報伝達レベルの動機と問題解決レベルの動機の全ての組合せがこれらの対話で生じるわけではないことを確認した。模擬対話でみられた発話動機に対しては、発話動機ごとに話題遷移パタンを定義し、考えられる動機から可能な話題を数え上げる。最後に、これらのモデルを組み込んだ発話予測メカニズムをプロトタイプシステムとして実現し、発話動機のモデルが発話予測に有効であることを確認した。
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