本研究では、脳波を多チャンネルで計測することによって得られる、脳電気活動のトポグラフィックな解析により、よりユーザーフレンドリーなマルチメディア機器制御の新手法の基礎的研究を行った。今回の研究期間内においては、マルチメディア機器制御に必要な各種コマンド入力の要求を、脳電気活動の変化としてとらえるための有効な計測手法を実験的に明らかにすることを目的とした。 停止・前進・後退など、動画・音響など時間軸をもつ情報に共通的な制御意図を、脳波で検出するための各種の方式について被験者の脳波を計測して検討した。その結果、事象関連電位P300のトポグラフィックに検出し、検出波形を周波数領域で処理することが有効であることが確認された。 その結果に基づき、マルチメディア機器のプロトタイプを作成し、ユーザビリティー評価を実施した。マルチメディア制御プロトタイプは、ディスプレイ上の同一位置にランダムに表示される5種類の制御コマンドに対する誘発脳波を、制御コマンド表示のタイミングに同期させて検出するものである。検出脳波の素波形をウェーブレット変換により周波数領域に展開し、学習済みデータとのマハラノビス汎距離を求めて判別を行った。その結果、加算をしないシングルトライアルのP300波形で70%程度の正判別率が得られた。 また本方式において問題となる脳波混入アーチファクトの識別については、空間領域と周波数領域の双方の特徴量をとることで、より有効に除去できることが確認できた。
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