本研究は、不確実性の下での多入力多出力システムの相対的効率性を評価するため、包絡分析法(DEA)の確率的性質を明らかにするとともにファジィデータによる解析法を開発することを目的として行われた。その研究成果は以下の通りである。 1 観測誤差を含む入出力データなどのもつ確率的変動に対して、DEAを確率的計画法の分布問題としてとらえ、その効率性の評価値ならびに評価に用いられる最適ウェイトへの影響を解析した。確率的変動は、信頼領域法の考え方によって表現し、ある確率水準で生起しうる最悪の実現値を想定している。その結果、確率的変動に対して安定な効率的システムの評価尺度としてを示し、従来のモデルではできなかった効率的システムの順序付けを行うための規準を新たに提案した。さらに、従来のモデルでは効率的システムを評価するときの最適ウェイトは一意に決まらないという欠点があるが、これらの中から確率的変動に対して最も安定的であるウェイトを選び出すためのモデルを提案した。等分散性などの条件を仮定したときには、従来モデルと一致することがわかり、ウエイト空間における幾何学的性質が明らかにされたことで、等分散性の仮定が外れたときへの拡張の可能性が生まれた。 2 確率変数としては取り扱えない不確実性を含むデータとして、ファジィカテゴリカル入力データを取り上げ、その効率性を評価するための新たなDEAモデルを提案した。ファジィカテゴリを導入することで、データのカテゴリー化で失われる情報を補うことができることがわかり、提案したモデルの有効性が検証された。
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