申請備品である直流電源装置、温度調整器、電子天秤が納入されてから、C_<60>プラズマに関する実験を行った。その結果、以下に述べる結果を得ている。 (1)接触電離カリウムプラズマへのC_<60>導入量(昇華用オ-ブンへのC_<60>塗布量)とC_<60>プラズマ生成時間の一部定量化を行った。さらにC_<60>の昇華温度を微調整することによって長寿命かつ安定したC_<60>プラズマの生成・制御が可能になった。 (2)プラズマ中の終端電極に取り付けたオメガトロン型質量分析器により、C_<60>プラズマ中のイオン種の分析を行った結果、K^+、C_<60>^-イオンの検出に成功した。さらにオメガトロンの入射、背面及び側面電極へ印加する直流バイアス電圧の微調整によって、高感度かつ高精度のイオン種分析が可能になり、C_<60>^-イオン信号と負イオン交換率との相関関係が明らかになった。 (3)C_<60>プラズマ中にシリコン及びガラス基板を設置し、基板バイアスに対するC_<60>プラズマ膜の電気伝導度変化を調べた結果、10^<-2>〜10^<+6>(Ω・cm)の広範囲にわたって膜の電気伝導度を制御することに成功した。また基板バイアスによってC_<60>とカリウムの入射比率を自由に制御することにより、特異な性質を有する膜を生成させることも可能になった。この結果に関しては、赤外吸収分光法による光学的測定及びX線回折による結晶性分析などとの定性的一致を得ている。 今後の研究展開としては、高真空かつ強磁場中でのイオン種の“その場"測定及び成膜実験を考えている。
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