トカマクプラズマの閉じ込め性能に関する研究は核融合やプラズマ物理における最大の課題のひとつである。近年、トカマク型プラズマ閉じ込め装置やヘリカル型プラズマ閉じ込め装置において改善モードと呼ばれる現象が見つかり注目されている。一部の改善モードでは閉じ込め改善と電流分布の間に強い相関が観測され、電流分布や磁気シアとプラズマの輸送との関係の理論的な検討も盛んに行われており、実験的な検証が熱望されている。 WT-3トカマクにおいて電流分布と閉じ込めの関係を調べるために低域混成波電流駆動プラズマを対象に実験を行った。閉じ込めの指標となる熱伝導係数は、電子サイクロトロン波加熱によって局所的に生成した熱パルスの伝達の様子から評価した。上下に2つある入射ランチャーの一方の位相差を変化させて励起する低域混成波の波長の制御を行い、電流分布を変化させた。詳細な電流分布の測定は行われていないが、下側のランチャーの位相差を電流駆動用のΔφ=90度に固定し、上側のランチャーの位相差を60度から330度まで変えてみたところ、電流分布の変化を示唆する、Λの変化が観測された。上側のランチャーの位相差を30度づつ変えて計測を行ったところ60度の場合と90度の場合で熱伝導係数が10m^2/sから5m^2/sに急激に変化した。この60度の場合と90度の場合でのΛの変化の差は0.05だった。この結果は大きな閉じ込めの改善が電流分布のわずか変化で起こることを示している。
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