本研究は、200〜400MeVエネルギー領域の陽子を種々の原子核に照射した際に、放出される軽イオンのスペクトルデータを測定して精度の良い荷電粒子原子核データを蓄積するため、測定システムを整備することを目的とする。 平成6年度は、実験で必要となる機器の準備・開発を行い、半導体検出器とシンチレーションカウンターからなる積層型固体検出器テレスコープを製作するとともに、テスト実験を九州大学理学部加速器実験室のタンデム型加速器(18MeV陽子)および、大阪大学核物理研究センター(300MeV陽子)において実施した。テレスコープ等機器の開発にあたっては、モンテカルロ計算コードを開発して検出器の応答特性等を注意深くシミュレートした。タンデム型加速器からの18MeV陽子を用いてのテストでは、主にゲート信号を作るタイミングとその時間的ゆらぎについて調査を行った。これは中間エネルギーの実験ではビーム照射中の環境γ線が強くなることから、ADC入力信号の時間幅の問題と共にゲート信号の時間幅に対して厳しい条件が課せられると予想されるためである。テスト実験の結果、製作したカウンターテレスコープの特性によってアクシデンタルな事象は時間幅0.5μ秒でほとんど排除できること、回路系の調整によっては時間幅0.3μ秒も可能であることが分かった。これを踏まえて、大阪大学核物理研究センターでカウンターテレスコープの応答関数を50MeVから300MeVの間の数点で測定し、良好な結果を得た。以上の結果、中間エネルギー領域原子核反応断面積測定のための装置等の開発・準備はほぼ完了し、本格的な測定を開始する体制が整った。
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