研究概要 |
本研究では、プラズマ対向材料での水素透過に及ぼす表面コーティングの効果を調べることを目的とした。純鉄とバナジウム試料の片側または両側に、金、パラジウム、モリブデンまたは酸化膜を被覆し、プラズマ駆動水素の透過量を測定した。プラズマ駆動水素透過の律速過程を明らかにするとともに、表面での再結合反応について検討した。入射側での再結合係数は、材料だけでなく、表面状態(表面欠陥の生成または不純物原子の吸着など)に強く依存していることがわかった。透過スパイクや入射イオンエネルギー依存性のような実験現象には、材料のバルク性質より、表面状態のほうが深く関わっているため、本研究は、コーティングにより、表面状態を変え、プラズマ駆動透過に及ぼす影響を調べることを特徴とした。コーティング法で、水素の透過量をコントロールすることができるのは、核融合炉の安全性の面で大きい意味を持っている。本研究の一部は、Fusion Engineering and Design(in press)、J.Nuclear Materials(in press)に発表する。 また、本研究者はプラズマ駆動水素透過における表面反応モデルについての論文をJ.Appled Physics(Vol.75,No.11,7531〜7537,1994)に発表した。このモデルでは、入射側においてノーマルな表面サイト照射により生成した表面欠陥サイトを考慮して再結合係数の計算式を導出し、また不純物の吸着により再結合サイトの面密度の変化について解析した。一方、裏側において、酸化膜の表面サイトを考慮し、再結合係数の式を導いた。プラズマ対向材料に入射した水素は入射側に再放出したり、裏側に透過したりする。水素の透過過程は、入射側と裏側において、それぞれ材料中の拡散あるいは表面での再結合に律速される。さらに、本研究者は、定常状態での律速について一般的なモデルを提出し、Philosophical Magazine(in press)に発表する。
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