1.測定装置の設計・製作 光学系はアルミ合金板上に構成した。赤外線光源に波長7μm帯で発振する鉛塩半導体レーザ(TDL)、また可視光源に波長0.6328μmで発振するHe-Neレーザを用いた。本装置は赤外光線と可視光線を同位置、同時刻で受信することを特徴としている。従って、光学系では、TDLとHe-Neレーザの光軸をビームスプリッタを用いて重ねた。製作した装置では、ZnS製ビームスプリッタを2枚使用した。計画では可視光源として可視光半導体レーザ、ビームスプリッタとしてゲルマニウム板を用いることとしていたが、可視光源についてはHe-Neレーザのビーム形状、また、ビームスプリッタに関してはZnSの透過率にそれぞれ優位であったので仕様変更を行った。赤外光線の受光には赤外線検出器(IRD)、He-Neレーザの受光には小型CCDカメラを用いた。 2.運用実験 製作した測定装置を用いて屋外運用実験を行い、大気中含有物質輸送料測定の基礎データを取得した。大気含有物質に水(H_2O)を選び、TDLの発振波長を水の吸収線が存在する7.9113μmに設定した。生データは1ms毎に取得されたそれぞれのレーザビームの光強度の時系列データである。特にHe-Neレーザの受光強度は2次元分布として取得したが、その中心点のデータと赤外光線のデータに関してデータ処理を行い両者の変動の同相スペクトル(コスペクトル)を計算した。その結果、冬期の自然大気中においては数Hz以下の受信光強度変動に強い相関があり、逆にこれ以上の周波数の変動成分では両者の間の相関が低くなることが判った。これより、大気含有物質の輸送量の情報は、赤外光線と可視光線の受光強度変動の相関の高い周波数領域に含まれていると思われる。 今後の予定 助成期間中の研究においては赤外光線の受光器が0次元であったので、今後は赤外線受光器をアレイ構造としてより詳細な実験を行う予定である。
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