DNA上のシトシンのメチル化と突然変異との関係、すなわち、自然突然変異率と誘発突然変異率に対するメチル化の存在の影響を調べるため、以下の実験を行った。 SupF遺伝子を持つプラスミドpUB3に、メチル化、あるいは紫外線処理を行ったあと、突然変異を固定するための大腸菌(ER1821)および、検出するための大腸菌(Sy1032/pKY241)に順次導入し、SupF遺伝子における突然変異率を調べた。 プラスミドのメチル化には、SssIメチラーゼを用い、すべてのCpG配列のシトシンを5-メチルシトシンにした(脊椎動物タイプのメチル化)。紫外線としては、254nmのものを300J/m^2照射した。ER1821は、メチル化されたDNAをrestrictionしない特殊なrecA^+株である。 メチル化を施した場合、しなかった場合に比べ、突然変異率は約2倍に上昇した。これは、5-メチルシトシンでは脱アミノ化が起こりやすいことを反映しているものと考える。 紫外線を照射することによって、突然変異率は約10倍に上昇した。メチル基がある場合とない場合の紫外線誘発突然変異率には、大きな差はみられなかった。TCG配列あるいはCGC配列の中央のCがメチル化されていると、紫外線による(6-4)photoproductの生成が抑えられるという議論もあるが、他の種類の損傷、他の配列での損傷の寄与が大きいため、この抑制が明らかにならなかった可能性がある。
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