研究概要 |
本研究の目的は放射線抵抗性細菌における放射線抵抗性の誘導機構の解明である.あるイベントに対し,ある活性が誘導されるためには,その活性を担う蛋白質が誘導されてこなければならない.この誘導は大きく二つに分けられ,一つは活性を担う蛋白質の新規合成であり,もう一つは蛋白質が不活性な状態から活性のある状態への移行という二つの方式が考えられる.本研究では蛋白質の新規合成,すなわち誘導蛋白質の確認から研究を始めた. 本年度の研究実績をまとめると放射線抵抗性細菌Rubrobacter radiotoleransで放射線によって誘導される蛋白質を二次元電気泳動ゲル上で3つのスポットとして検出することが出来た. まず本種の可溶性画分の抽出方法を検討した.本種はAchromopeptidaseによって細胞壁を破壊することが必要であるが,試料中へのその混入を避けるため,0.2M sucroseによる高張溶液での処理を確立した.次にradioisotope(RI)を使わずに二次元電気泳動ゲルの銀染色でスポットの変化をみたが確認できなかった.よって^<35>S-methionineの取り込みにより蛋白質の新規合成をみるために,ラベル条件の検討を行った.この結果からRI濃度1.85 MBq/ml.ラベル時間1hで行うこととした.次に照射条件の検討を行った.放射線照射誘導蛋白質においては,低線量と高線量では誘導されてくるものが異なることが考えられるが,本研究においては高線量での照射誘導を目的とした.その結果8kGyでD_<37>である16kGyと同様の,誘導が起こることがわかった.次に泳動条件の検討を行った.一次元目をpH4.5-6の等電点電気泳動,二次元目を7.5%アクリルアミドゲル電気泳動で行うこととした.それによりpI5付近,分子量40kDa付近に,放射線照射時のみに現れる3つのスポットが検出された.これをシークエンス対象物として現在大量調製中である.
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