研究概要 |
我々は、放線菌が、酵母エキス、リン酸カリウム、硫酸マグネシウムという比較的単純な培養系で十分生育し、水溶液中に懸濁しているカオリン粒子を凝集させることのできる物質を培養液中に分泌することを明らかにした。 凝集物質の生産条件について検討したところ、グルコースのような単糖では、菌体は十分に生育するがその培養液中に凝集活性を示す物質を検出することはできなかった。これは、炭素源としてグルコースを用いた場合には、放線菌はその培養液中に凝集物質を分泌しないのかあるいは凝集作用を阻害する物質も同時に生産するのかどちらかであると考えられるがこのことは今後の課題である。また、培養液の初発pHも凝集物質の生産に大きく関係していることも明らかとなった。 さらに、本凝集物質の正体を明らかにするために培養液からアセトンとエタノールを用いた有機溶媒による析出法およびゲル濾過体(Sephadex G-200)による分離精製を行った。その結果、約30倍にまで精製することができ、比較的高度に純化した精製標品が得られた。ゲル濾過クロマトグラフィーにより得られたクロマトグラムから凝集物質の分子量を推定すると200,000以上の比較的大きな分子あるいは集合体であることが明らかとなった。また、本凝集物質の性質について測定したところ、酸性領域で凝集活性を示し熱に対して弱い構造を有していることが示唆された。次いで、凝集助剤としてどのようなカオチンが最適か検討したところ2価のイオンが有効であることがわかった。 今後は、本凝集物質の純度を検討するとともにどのような成分により構成されているのかといった化学的組成分析及び物理学的性質等について検討する。 微生物
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