ショウジョウバエの性決定に関与していることが知られているSxl蛋白質は、分子中にRNA分子との結合に関与しているアミノ酸約80残基からなるドメインをタンデムに二つ持っている。このRNA結合ドメインのうち二番目のもの(RBD II)についてNMRによる構造解析を行い、このドメインが通常のRNA結合ドメインよりも長いループ構造を持つものであることを明らかにしている。今年度は、Sxl蛋白質が、認識すると考えられるRNA結合配列(GUUUUUUUUAGUG)とRBD IIとの相互作用をUVクロスリンクやNMRの手法を中心に解析を行った。まずUVクロスリンクの実験からSxl蛋白質によるRNA分子の強い結合には、RBD IとRBD IIの協同作用が必要であることがわかった。しかし、NMRによる解析からRBD II部分だけでもRNA分子の特異的な認識が行われていることが明らかになった。認識の様式を調べるため、数種類のRNA配列を合成し、RBD IIとの相互作用を調べたところ、UUUUUUUUの部分だけではなくCUAGUG部分もRBD IIと相互作用を行うことがわかった。また、UUUUUUUU部分とCUAGUG部分は、異なった認識様式によってRBD IIと相互作用を行っていることがわかった。この認識は、CCCCCCCCのような配列では、起こらず、配列特異性を持っている。さらにNOEによる実験からこの認識には、RBD IIのベータ-シート構造だけでなくRBD IIのN末端部分やC末端部分が関与していることが明らかなった。
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