warfarinはビタミンK(VK)の拮抗剤で抗血栓薬として臨床応用されているが、warfarin投与下に合成されるプロテインC(PIVKA-PC)やVII因子の血中濃度は著減する。今回、warfarinのPC分泌への影響を調べる目的で、ヒト腎臓由来293細胞またはBHK細胞にPC遺伝子を導入し、VKまたはwarfarinの存在下でPCの分泌量及び分泌速度を調べた。 まず、293、BHK細胞で一過性発現を行い、48時間後の細胞抽出液と培養液中に分泌されたPC量をELISA法で測定した。その結果、warfarin下の293細胞ではVK下に比べ、細胞内に2.3倍蓄積され、分泌量は26.5%であった。また、BHK細胞では細胞内蓄積は認められないものの分泌量は1/2であった。次に、パルスチェイス実験を行った結果、VK下ではいずれも4h後にはラベルされた全分子が分泌されるのに対し、warfarin下では細胞内PCの減少を補完する量の分泌が見られず、総放射線量はBHK細胞で8h後に元の19%に、293細胞でも24h後には30%に減少した。また、小胞体からゴルジ体への移行を阻害するbrefeldinAやリソソームプロテアーゼの阻害剤であるNH_4CI、クロロキン、ロイペプチンは放射線量の減少を阻止しなかった。一方、システインプロテアーゼ阻害剤であるALLMやALLNは濃度依存的に細胞内の放射線量を回復させた。さらに、PIVKA-PCは、二重免疫蛍光染色法によりプロテインジスルフィドイソメラーゼと同所にあり、endo H処理により細胞内PCバンドが低分子量化することから小胞体に局在することが示された。 以上の結果、本研究を通じ、PIVKA-PCは、T cell receptorやHMG-CoA reductaseの細胞内代謝で見出されたいわゆる"小胞体のquality control機構"により分解されるため、血中濃度が著減することが見出された。
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