ヌクレオチド合成の律速酵素であるPRPP合成酵素は触媒サブユニットとは別の活性調節蛋白質を含む。我々はこの蛋白質のcDNAクローニングに成功し(別研究)、PAP39と命名した。PAP39は触媒サブユニットに結合し、活性を抑制することから、その量的な変動が、本酵素の活性を調節する可能性が出てきた。そこで本蛋白質の遺伝子発現調節機構をしらべることが重要となる。ラットゲノムライブラリーより単離した、本結合蛋白質の5′上流領域は、触媒サブユニット遺伝子と共通のAP-2結合部位、Sp1結合部位、cAMPresponsive element等の発現制御領域がもつ。さらに、PAP39と同様触媒サブユニットに結合し、活性を抑制するオルニチン脱炭酸酵素アンチザイムのプロモーターと共通配列が存在する。本年度は、これらの配列の発現調節における意義を知るために、5′上流領域をクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子上流に連結し、ラットPC12細胞においてCATアッセイを行った。さらに培養細胞系にcAMP類似体を添加後、触媒サブユニットとPAP39のmRNAレベルの変動をしらべた。 その結果、作成した融合遺伝子を細胞に導入したところ、CAT活性が認められた。このことから、単離した5′上流領域には、予想された通り、転写活性があることが判明した。さらに、5′領域を欠失させたところ、転写開始部位上流約300塩基対の領域が本遺伝子の発現に必要であった。PC12細胞では、フォルスコリン刺激により、mRNAレベルが、PRPS1では減少し、PAP39では変動しないことが判明した(第67回日本生化学会発表)。フォルスコリンにより、mRNAのレベルが減少する遺伝子の報告は極めて少ない。以上当初の目的である、PAP39プロモーターの機能解析をほぼ完了することができた。今後はさらに、CATアッセイで同定した発現制御領域のDNA断片を用い、gel shift assay等の方法で、その領域に結合する転写因子の同定を試みる。
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