DNAヘリカーゼBが温度感受性になっていると思われるマウスFM3A細胞の変異株、tsFT848株より4種のカラムクロマトグラフィーを用いてDNAヘリカーゼBの部分精製を行った。同様にして精製した野性株由来のDNAヘリカーゼBとの温度感受性を比較したところ、tsFT848細胞由来のDNAヘリカーゼBのDNA依存性ATP分解活性は部分精製された状態であっても非許容温度したでの不安定性が野性株に比べ高まっていた。さらに、部分精製をおこなったことによりヘリカーゼ活性の比較が可能になったが、この結果においてもtsFT848細胞由来のDNAヘリカーゼBの非許容温度下での不安定性が示された。以上の結果より、tsFT848細胞が非許容温度下でDNA合成を停止する原因はDNAヘリカーゼBの温度感受性変異によることが更に強く示唆された。 また、tsFT848細胞より部分精製したDNAヘリカーゼBの非許容温度下での失活は一本鎖DNAの共存により防ぐことができるため、細胞内においてもDNAに結合していない状態のDNAヘリカーゼBの失活が温度感受性のDNA合成の低下の原因となっていると考えられる。tsFT848細胞を用いておこなったfiber-autoradiographyにおいても伸長を開始したDNA上での新生DNAの長さには野性株との間に有意な差は見られず、高温による失活の標的はDNAに結合していない状態にあるDNAヘリカーゼBであることを示している。 さらにFM3A細胞より精製したDNAヘリカーゼBとDNAプライマーゼの相互作用を調べる目的で、DNAヘリカーゼB共存下でのDNAプライマーゼ活性を測定した。DNAプライマーゼ活性はDNAプライマーゼによって一本鎖M13DNA上に合成されるプライマーRNAを電気泳動により分離する方法を用いて解析した。この結果、DNAプライマーゼによって合成される10ヌクレオチド前後のオリゴリボヌクレオチドがDNAヘリカーゼの共存により著しく増加することが観察された。これはDNAヘリカーゼBがDNA複製に関わっていることをさらに支持する結果である。
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