ポリオウイルスは霊長類(ヒト、サル)にのみ感染する。ヒトやサルの細胞表面には免疫グロブリンスーパーファミリーに属するポリオウイルスレセプター(PVR)という分子が存在し、ポリオウイルスが細胞に吸着する際の受容体として機能することが分かっている。しかしながら、このポリオウイルスレセプターの本来の生理的な機能は全く分かっていなかった。多くの免疫グロブリンスーパーファミリーに属する分子が細胞間の認識に関与している。本研究では、ポリオウイルスが細胞間の接着分子ではないかと考え、細胞凝集活性を指標にこの仮説を検討した。 まず、ヒトPVR、サルPVRあるいはマウスPVRホモログ(マウスPVR)をマウスL細胞に大量に発現しているステーブルトランスフォーマントを作製した。これら細胞株の細胞凝集活性を測定したところ、マウスPVRを発現したL細胞が非常に強い凝集活性を示した。また、この細胞凝集は(1)抗マウスPVRモノクローナル抗体やリコンビナントマウスPVRタンパクで阻害されること、(2)2価カチオン非要求性であること、(3)同種の細胞間(すなわちマウスPVRを導入した細胞間でのみ)で観察された。また、(4)マウスPVRタンパクの細胞上での局在を調べてみるとマウスPVRはもっぱら細胞間のジャンクションに存在していた。以上の、結果からマウスPVRは細胞間のホモフィリックな接着タンパク質であることが分かった。ヒト、サルPVRに関しては今のとこと接着活性を検出しておらず今後の課題である。
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