研究概要 |
〈多孔性ガラスでヘモグロビンを安定に封入する技術開発〉、Ellerbyら(1992 Science 255,1113.)によって報告されたゾル-ゲル法を改良して、ヒトのオキシ型あるいはデオキシ型ヘモグロビンを可逆的酸素脱着能を保持したまま透明な多孔性ガラスに(リン酸緩衝液を細孔に含む状態のまま)封入することに成功した。この様にして初期状態をオキシ型あるいはデオキシ型で封入したヘモグロビンの光吸収スペクトルを通常の溶液中のスペクトルと比較したところ、両スペクトル共完全な一致が得られた。 〈機能測定の結果〉初期状態をデオキシ型で封入したヘモグロビンとオキシ型で封入したヘモグロビンの酸素平衡機能を比較すると、両者共協同性は消失しており、酸素親和性の値は約500倍異なっていた。また、この時観測された酸素平衡定数は、通常のヘモグロビンに対する1個目及び4個目の酸素平衡定数とほぼ一致していたので、ヘモグロビン分子は封入時の高次構造を保持したまま安定な状態で多孔性ガラス中に存在し、リガンド脱着に伴う機能変化はほぼ完全に抑えられていることが結論された。 〈構造測定の結果〉デオキシヘモグロビンの光吸収スペクトルはタンパク質の高次構造変化に伴い変化することが過去の研究から知られている。そこで、初期状態をオキシ型で多孔性ガラス中に封入した試料とデオキシ型で封入した試料のデオキシスペクトルを比較してみたところ、両者の差スペクトルは過去に報告されたデオキシRとデオキシTの差スペクトルに大きさ、形が一致した。 〈まとめ〉本研究の結果は、2状態モデルの基本仮定の一つとなる4次構造と機能の一対一の関係を支持するとともに、タンパク質の構造と機能の関係を調べる新しい手法としてゾル・ゲル法が使えることを示唆している。
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