研究概要 |
リボースをフッ素で標識したADPアナログ,4-fluorobenzoic-ADP(4-FB-ADP)の合成を行ない、骨格筋ミオシン及び3種類のリン酸アナログ、AlF_4^-,BeFn,Viを用いて複合体を形成を行なった。regular ADPと同程度の安定な複合体が形成されていることをゲル濾過、透析により確認した後、各複合体の^<19>F-NMRスペクトルの測定を行なった。各複合体の4-FB-ADPに依存する^<19>F-NMRのシグナルにおいて化学シフトの差異は見られなかった。平成5年度の研究計画によるアデニン環に相当する部位をフッ素で標識したATPアナログ,2-[(4-trifluoro-methyl-2-nitrophenyl)amino]ethyl diphosphate(TFNDP)を用いた^<19>F-NMRの実験では、3種類の複合体のATP結合部位の間に構造の差異が明らかに見られた。これらの結果から遷移状態を形成すると思われる3種類の複合体においてATP結合部位のリボースが結合する部位では構造が異なっておらず、アデニン環結合部位での構造が異なっていると思われる。 各複合体を形成するミオシン頭部の局所的な部位、特に反応性の高い活性リジン(Lys83)、活性システイン[SH1(Cys707)-SH2(Cys697)]が存在する部位での構造変化をTNBS,ABDFといった特性紫外吸収あるいは蛍光をもった試薬による化学修飾で調べた結果、BeFnとViの複合体ではATP存在下に類似した状態を示し、AlF_4^-複合体ではATPが無い状態に近いことがわかった。 以上の結果からミオシン頭部のATP結合部位ばかりでなく、アクチン結合部位とATP結合部位の間に存在するRLR,SH1-SH2領域での局所的な部位における構造が各複合体で異なっていると考えられる。
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