研究概要 |
1.酸素発生系におけるMn-Caクラスターの構造 光合成系IIにおける酸素発生MnクラスターとCaの構造上の関係とその役割を調べるため、通常の系II膜標品とCa除去した系II膜標品について、S_1,S_2状態間の閃光誘起フーリエ変換赤外(FT-IR)差スペクトルを測定した。その結果、(1)通常の酵素発生系では、S_1状態において、Mn、Ca間のカルボキシル基による架橋構造が存在すること、(2)S_2状態において、このカルボキシル基のCaへの配位結合が切れること、(3)Caの存在が、S_2状態の生成の際に起こるタンパク質の二次構造の変化を誘起すること、(4)Ca除去により、上のカルボキシル基はMnからも遊離すること、などが明らかとなった。上記(4)の結論は、Ca除去した系II膜標品のMnのX線吸収スペクトル(XAFS)の測定からも確かめられた。 2.酵素発生系における基質水分子の結合状態 酵素発生(水分解)系におけるMnクラスター上の水分子の結合構造とタンパク質との相互作用を調べるため、S_1,S_2状態間の閃光誘起FTIR差スペクトルをH_2O及びD_2O中で測定した。様々な形態で水と相互作用をするモデルカルボキシレート化合物のFTIRスペクトルと比較した結果、水分解系のMn原子に配位している水分子は蛋白質由来のカルボキシレート配位子と強い水素結合をつくっていることが明らかとなった。このことから、このカルボキシレート配位子が、水からプロトンを引き抜く際の最初の受容体となっていると考えられた。
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