遺伝子のコアプロモーターはTATA boxと転写開始点領域から構成されており、この上に基本転写因子が複合体を形成し基礎転写を行う。また、特異的塩基配列に結合する転写調節因子がその遺伝子の転写活性を制御している。本研究では、酵母のガラクトース代謝系遺伝子の転写抑制因子をコードするGAL80遺伝子の転写調節機構を解析し以下の結果を得た。1.5'上流域を欠失したGAL80遺伝子の転写活性を調べた結果-185付近に基礎及び誘導転写活性を促進する領域が存在することが明かとなった。 2.GAL80遺伝子の基礎転写は、転写開始点+1領域の構造に依存しており、また転写活性化はGal4pとTATA boxにより制御されている。3.+1領域は、それのみで酵母内、及び無細胞転写系において基礎転写活性を持つ。4.更にゲルシフト法により+1領域に特異的に結合するタンパク質(yIF:yeast initiator binding factor)を検出した。これらの結果よりGAL80遺伝子の基礎転写は、それのみで基礎転写を行う+1領域(Initiator)により維持されており、また、転写活性化はGal4PとTATA boxにより制御されていることを明らかにした(Mol.Cell.Biol.14:6819-6828.1994)。InitiatorはTATA boxと同様に、遺伝子の転写機構において重要な領域であるにもかかわらず、その解析に関する研究は乏しい。特に酵母では殆ど研究されておらず、本研究で初めて酵母のInitiator活性が明らかになった。
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