研究概要 |
我々はすでにアルドラーゼとホスホグリセロムターゼ遺伝子のキメラプロモーターを作製し、MEF-2コンセンサス配列の違いだけでも心筋・骨格筋での特異性に差が生じるような予備的なデータを得た。このことはMEF-2転写因子のサブタイプの違いで心筋と骨格筋の特異性が決ることを示唆する。MEF-2はヒトにおいて少なくとも4つの遺伝子がクローニングされているが、心筋特異的な発現パターンを示すものは特にまだ知られていない。そこで心筋特異的MEF-2、あるいは心筋の発生に関わるようなMEF-2遺伝子の単離をめざして次のような実験を計画した。1)MEF-2遺伝子の保存された領域を基にしてmixed oligonucleotideを合成し、PCRを行い新たなMEF-2遺伝子のクローニングを試みる。2)クローニングした遺伝子の発現パターンを調べる。3)in vitroで心筋様の形態に分化する細胞株(P19)を用いて、クローニングした遺伝子の心筋発生における役割を調べる。 未分化胚細胞P19をDMSOで分化誘導し、0日目、6日間の細胞RNAを分離し、それをテンプレートにしてMOPAC(mixed oligonucleotide primed amplification cloning),RT-PCR、クローニングおよびシーケンスを行なった。その結果、従来のMEF2A,MEF2D以外にMEF2B′遺伝子が得られた。この遺伝子はF9,ES,P19細胞などの未分化型で発現し、分化型では発現が減少していることがわかった。成体組織(肝、心、筋、腎、脳、肺)ではほとんど発現なく、胸腺、脾、精巣でわずかに発現していた。このことは新しいMEF2B′は従来の分化型のMEF2と比較して異なった役割を担っているものと考えられる。
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