マボヤ成体の体壁筋(縦走筋、環状筋)に存在するコネクチン様タンパク質は見かけの分子量が2000Kのもの1種類であると1992年に筆者らは報告したが、当時の電気泳動の系の技術的な問題からゲル上で1本に見えているコネクチン様タンパク質のバンドが1種類のタンパク質から構成されているのかどうか、またその見かけの分子量の精度については判断できていなかった。そこで今回改めて濃度勾配の緩やかなポリアクリルミドゲル(2.3-4%)を用いて電気泳動を行い、更に低タンパク量のバンドを検出するために銀染色を行った。その結果マボヤ体壁筋のSDS全抽出物の電気泳動像には二種類の高濃度のコネクチン様タンパク質(見かけの分子量はそれぞれ3300K、2800K)と、3300Kの分解物と考えられる1本のタンパク質のバンド(同じく3000K)が存在することが新たに確認された。またこれらのタンパク質のバンドはPAS染色法では染色されないこと等からタンパク質鎖に糖鎖が結合することにより見かけの分子量が大きくなっているわけではないことが推定された。これらのコネクチン様タンパク質は抗ニワトリコネクチンモノクローナル抗体3B9と交叉反応することがわかっており、現在この3B9とマボヤ体壁筋のグリセリン筋(脱膜モデル)を用いて細胞内での局在様式を光学顕微鏡レベルで検討を行っている。またこのマボヤ体壁筋コネクチン様タンパク質に対するポリクローナル抗体を作成しており、細胞内での局在の電子顕微鏡レベルでの検討の他、定性的実験のためのタンパク質の単離実験、他の無脊椎動物におけるコネクチン様タンパク質の検索に用いる予定である。
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