研究概要 |
1.ブタ透明帯糖タンパク質PZP3αの精子結合部位の同定 化学的方法あるいはN-グリカナーゼ消化によりO-グルコシドあるいはN-グリコシド結合型糖鎖をPZP3αから選択的に遊離させた。O-グリコシド結合型糖鎖を失ってもPZP3αの精子結合活性はほとんど低下しないが,N-グリコシド結合型糖鎖を失うと活性が消失した。精子結合部位はPZP3αのN-グリコシド結合型糖鎖に存在することが明らかになった。 PZP3αのリシルエンドペプチダーゼ消化産物を逆相系HPLCにかけたところN-グリコシド結合型糖鎖を2本有しPZP3αのN末端側半分に相当する糖フラグメントと残りの1本のN-グリコシド結合型糖鎖を有する短い糖ペプチドが精製された。糖フラグメントは未処理のPZP3αにほぼ匹敵する精子結合活性を保持していたが,短い糖ペプチドは精子結合活性を持たなかった。このことからPZP3αのN末端側半分が精子結合ドメインを成していることが示唆された。 2.ウシ透明帯の精子結合糖タンパク質の同定と一次構造解析 ウシ透明帯の3種の構成糖タンパク質の逆相系HPLCによる精製法を確立し,各成分について競合法を用いて精子結合活性を調べた。見かけの分子量68,000の成分(BZP68)が主に精子結合に関与していることがわかった。BZP68の部分アミノ酸配列を数カ所決定し,その配列をもとにオリゴヌクレオチドプライマーを作製(委託合成)した。ウシ卵巣のcDNAライブラリーを作製し,合成プライマーを用いて,PCR法によりBZP68のcDNA断片を得た。この断片部分に関しては,BZP68のアミノ酸配列はPZP3αと高い相同性を示した。このcDNA断片をプローブとして用いて現在BZP68の全長のcDNAの単離を試みている。
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