研究概要 |
ウニ受精卵より分裂装置を単離し,そこから得られた中心体断片(MTOG)を微小管形成核として,その調節機構に関する研究を行った。MTOGにMPF(分裂中期促進因子)を作用させると,その構成タンパク質のリン酸化が起こり,微小管形成能が増加する。そのときリン酸化されるタンパク質は多種類あり,MPFの阻害剤やアルカリ性ホスファターゼで処理した試料の解析から,分子量7万のタンパク質がその基質として,リン酸化の状態と微小管形成能との間に相関関係があることがわかった。現在,そのタンパク質についてさらに調査している。一方,MTOGに対するホスファターゼの作用についても検討した。アルカリ性ホスファターゼはMTOGの微小管形成能を低下させるが,完全には消滅させない。酸性ホスファターゼも同様の効果を示した。また,両方のホスファターゼとも,MPFで上昇した中心体の微小管形成能を元のレベルにまで戻した。さらに,MTOG画分そのそのにもホスファターゼ活性が存在していた。MTOGに内在するホスファターゼ活性は,アルカリ性ホスファターゼの活性を阻害する40mMのβ-グリセロリン酸で阻害されなかった。しかし,β-グリセロリン酸は,保存中のMTOGの微小管形成能を低下させた。以上の結果は,先に行われている研究において示された,中心体の微小管形成能の調節が,構成タンパク質のリン酸化・脱リン酸化で行われているという推論を裏付けてはいるが,その調節様式は単純ではないことも示唆している。現在,ウニ卵の受精直後に細胞内で形成される中心体の無細胞系での再構成を試みているが,そこで形成された間期の中心体を材料として,今回行われた実験の再評価を計画している。
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