培養マウス線維芽細胞C3H-2Kを材料として、アクチン結合タンパク質コフィリン並びにデストリンの発現を抑制できるアンチセンスRNA発現プラスミドの選択を以下のように行なった。発現プラスミドとして、本細胞で効率よく働くSRαプロモーターの下流に、インフルエンザへマグルチニン由来のHA1エピトープを付加したネオマイシン耐性遺伝子(HA1-APH)と数種の逆向きコフィリン(或いはデストリン)cDNA断片を順に配置したプラスミド、または逆に配置したプラスミドを作製した。単に逆に配置しただけではHA1-APHの発現が見込まれないため、この場合にはHA1-APHの直前にウイルス(ECMV)由来のIRES配列(5'-キャプ構造に依存せず、mRNA上の任意の位置からタンパク質の翻訳を可能にする配列)を挿入した。細胞に一過性に発現させてから熱ショックで核内アクチン・ロッド(コフィリンとデストリンが結合している)を誘導した後、蛍光抗体染色法によりアンチセンスRNAを発現している(即ち、HA1-APHを発現している)細胞をHA1を認識する抗体で識別し、それらの細胞に於けるコフィリン(或いはデストリン)の存在量と核内蓄積効率をコフィリンやアクチンに対する抗体で調べた。その結果、逆向きcDNA断片をHA1-APHの下流に配置した方がより有効であり、特にデストリンのコード領域cDNAを組み込んだものでは、熱ショック・ストレスを負荷した際のデストリンの核内蓄積が25〜32%にまで低下した。コフィリンの場合も、5'側26例bp或いは660bpのcDNA断片を組み込んだものでコフィリンの核内蓄積が27〜43%まで低下した。有効性が期待されるこれらのcDNA断片を使用して安定形質転換体を取得し、ストレス耐性獲得等に果たす両タンパク質の役割を検討する段階に入っている。
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