塩基性繊維芽細胞増殖因子(basic Fibroblast Growth Factor;bFGF)で処理をした肢芽進行帯中胚葉の初代培養細胞をホモジェナイズし、これを抗原としてマウスとウサギに免疫を行った。これらの動物から得られた抗血清を用いてウエスタンブロッティングを行ったところ、抗血清に含まれる抗体と結合する複数のタンパク質が抗原中に検出された。次に、bFGFで処理をしていない肢芽進行帯中胚葉の初代培養細胞を用いて抗血清の吸収処理を行った。この結果bFGF処理を行った細胞に特異的に見られる4種類のタンパク質を検出することに成功した。これらのタンパク質のおよその分子量はすべて97kDa以上であり、このうちの一つはその発現パターンからAV-1タンパク質であることがわかった。他の3つのタンパク質については未同定であり、未知の分子である可能性が考えられる。これらの分子を同定するためには抗体を用いた抗原の分析やそれらをコードする遺伝子の単離などが考えられるが、これらを行うためには、吸収操作を省略してより高い結合能を持つ抗体の作成が必要である。現在、これらの未同定の分子に対するモノクローナル抗体を作成中である。 本研究によって検出されたタンパク質は、肢芽の発生において外胚葉性頂堤(Apical Ectoderm-al Ridge:AER)の作用によって発現が維持されるものであることが強く示唆される。AERは肢の骨のパターンを形成するために重要な領域の一つであり、今回の結果はAERの作用機構を解明するための重要な手がかりとなるものである。
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