研究概要 |
1.標的遺伝子組換え用ベクターの作製 マウス129系統の染色体DNAライブラリーより単離したβ1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(Gal Tase)遺伝子をもとに標的遺伝子組換え用ベクターを作製した。Gal Tase遺伝子の第1エクソンの翻訳開始コドンを含む0.4kbの領域を削除して、代わりにポジティブ選択用のネオマイシン耐性遺伝子を挿入し、5'末端にはネガティブ選択用のジフテリアトキシンA断片遺伝子を結合したベクターを作製した。5'側の相同領域は6.2kb、3'側の相同領域は1.7kbで、3'側の領域でPCR法により相同組換え体を検索できるようにプライマーを設定した。翻訳開始領域を削除しているので、相同組換えにより置換すれば、Gal Taseは全く合成されないはずである。 2.相同組換えES細胞の単離 このベクターをR1というES細胞に導入して、G418耐性のコロニーを多数単離し、PCR法で検索したところ、180個のうち12個という高い頻度で陽性クローンが得られた。サザン・ハイブリダイゼーション法で調べたところ、このうち9個のクローンが相同組換え体であることが確認された。 3.Gal Tase遺伝子の欠損マウスの作製 形態的に未分化状態をよく保持しているクローンを3個選び、キメラマウスの作製を行った。通常よく行われている胚盤胞への注入法ではなく、10-15個のES細胞塊を2個の8細胞期胚ではさみこむ集合キメラ法を用いた。すでにIL-1β遺伝子を欠損させたR1細胞を用いて、この方法により非常に効率よく生殖系列キメラマウスを作製した実績がある(浅野ら未発表)。実際この場合も、3個のうち2個のクローンから19匹のキメラ率70%以上の雄のキメラマウスが得られた。現在、交配により生殖系列への伝達を調べているところであるが、IL-1βの経験から今年度中にはGal Tase欠損マウスが得られることは間違いない。Gal Tase遺伝子欠損マウスができれば、マウス発生過程におけるGal Taseの機能を詳細に解析して行きたいと考えている。
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