研究概要 |
ヒトデ卵母細胞は、ホルモンである1-メチルアデニン(1-MA)によって減数分裂を再開し成熟する。我々は、1-MA情報伝達系にGTP結合蛋白質(G)が関与することを見出し、Gのβγサブユニット(βγ)が卵成熟促進因子(MPF)の形成に働くことを明らかにして来た。本年度は、1)βγの卵内における分布、2)βγによって促進される蛋白質のリン酸化、について研究を行ない、下に示すような成果を得た。 1)ヒトデGのβサブユニットに対する特異的なモノクローナル抗体を作成して、卵母細胞を蛍光顕微鏡観察したところ、細胞膜だけでなく、細胞内にも染色が認められた。細胞内には、約0.7μmおきにドット状またはビーズの様に染色される繊維が観察された。この繊維は網目状のネットワークを構成しており、細胞表層に密であるが、核の周囲においても存在していた。抗γ抗体を用いて二重染色したところ、全く同じ網目状のネットワークが得られた。これらの結果より、ヒトデ卵母細胞において、βγは細胞内の繊維上に存在することが明らかになった。さらに、この繊維は抗サイトケラチン抗体で染色されたことから、βγはヒトデ卵母細胞においてサイトケラチンと相互作用していると考えられる(Dev.Biol.,1995,in press)。 2)MPF活性はリン酸化や脱リン酸化によって制御されていることから、βγによるMPF形成の過程にもリン酸化の関与が予想された。そこで本年度は、βγによってリン酸化される蛋白質の検出をin vitroで検出できる系を開発した。すなわち卵ホモゲネートに放射性のATPを加えたところ、64kDaの蛋白質がβγ特異的にリン酸化されることが明らかになった(未発表)。現在この蛋白質の同定を試みている。
|