研究概要 |
1.C細胞の神経様形態変化に関わるプロテインキナーゼの種類 ラット胎仔甲状腺より作成したC細胞の初代培養系では、カルフォスチンCによって神経様形態変化が誘起されたが、H-89やKN-62は無効であった。このことより、神経様形態変化にはプロテインキナーゼCが関与していることが示唆された。一方rMTC6-23細胞では、カルフォスチンCおよびH-89で神経様形態変化が認められ、KN-62では認められなかった。この結果より、プロテインキナーゼCおよびサイクリックヌクレオチド依存性プロテインキナーゼの関与が示唆された。 2.C細胞の神経様形態変化とタウのリン酸化状態との関連 イムノブロット法によってrMTC6-23細胞のタウのアイソフォームを確認したところ、分子量60,000〜80,000の低分子量タウならびに分子量110,000〜120,000の高分子量タウの両方が存在しており、両者はさまざまな程度にリン酸化を受けていることが示された。プロテインキナーゼ阻害剤あるいはプロテインホスファターゼ阻害剤の存在下で培養したrMTC6-23細胞につき、同様にタウの分子型を調査した結果、前者によりタウの脱リン酸化、後者によりリン酸化が起こる傾向が認められたが、結論を得るには至らなかった。明確な結果が得られなかった原因として、rMTC6-23細胞がヘテロな細胞集団であり、これらの薬剤に対する反応性にも個々の細胞間での差異があることが疑われた。そこで下記3の実験を行った。 3.rMTC6-23細胞のサブクローニング 上記2の問題点を解決するため、rMTC6-23細胞のサブクローニングを行い、プロテインキナーゼ阻害剤により神経様形態変化を起こす均質な細胞亜株の確立を試みた。その結果、ほぼ条件を満たす細胞集団を得ることに成功した。今後この細胞亜株を用い、神経様形態変化とタウのリン酸化状態との相関について再検討を行なう予定である。
|