研究概要 |
上丘は黒質網様部の出力先として,大脳基底核の回路および機能を考える上で,きわめて重要な構造である.本研究では,ラット上丘(Superior Colliculus)に順行性標識物質であるPHA-Lを注入し,標識終末の分布を検討した.ネンブタール麻酔下のラットの上丘にPHA-Lを電気泳動を用いて注入し,1週間の生存期間の後,灌流固定し,凍結切片作成後免疫組織化学的にPHA-Lを検出した.その結果,これまで知られていなかった,視床下核(Subthalamic nucleus)に終止する上丘出力線維の存在が見いだされた.さらに,上丘の様々な部位にPHA-Lを注入することにより,上丘視床下核投射の起始細胞が,上丘深層の尾側半に多く存在することが明らかになった.また,逆行性標識物質であるFulorogolod(FG)の視床下核内への注入により,上記の所見を確認することができた.今回明らかになった上丘視床下核投射は,眼球運動に際しての上丘深層ニューロンの活動後に,視床下核に対して興奮性に作用し,眼球運動後に活動する視床下核のニューロンが多く存在するという,既に知られている電気生理学的事実の基礎となる投射と考えられる.また,大脳基底核出力核すなわち,淡蒼球内節や黒質網様部の出力先から大脳基底核へのフィードバック系の一部を,脚橋被蓋核や視床髄板内核と共になしていると考えられる.
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