Gタンパク質結合型グルタミン酸受容体mGluR1〜mGluR7のうちmGluR4/mGluR6/mGluR7は、L-AP4(L-2-amino-4-phosphonobutyrate)に感受性があり、L-AP4を用いた電気生理学的研究により、少なくともその一部がシナプス前膜に存在しシナプス前抑制に関与していることが示唆されている。しかしながら、mGluR4/mGluR6/mGluR7の詳細な形態学的解析はいまだなされておらず、細胞レベルの局在は明らかでない。本研究課題ではmGluR4/mGluR6/mGluR7のうち中枢神経系に広く分布すると予想されるmGluR4/mGluR7について、まず、in situ hybridization法による組織レベルの局在解析を中枢神経系全体にわたって行なった。さらに、光学・電子顕微鏡下に細胞レベルの局在を精査するべく、mGluR4/mGluR7の特異抗体の作製を試みた。その結果、in situ hybridizatin法では、mGluR4mRNAとmGluR7mRNAの分布は著しく異ることがわかった。mGluR4mRNAとmGluR7mRNAはいずれも神経細胞だけに発現したが、mGluR7mRNAはmGluR4mRNAに比べてより広い範囲に分布し、一部の部位ではmGluR4とmGluR7の両方のmRNAが発現を示した。L-AP4によるシナプス前抑制が報告されている部位には、mGluR4とmGluR7のいずれか一方または両方が発現し、mGluR4/mGluR7のシナプス前抑制への関与が示唆された。一方、特異的な抗体の作製では、合成ペプチド・大腸菌融合タンパク質を抗原としたウサギ・モルモットへの免疫を繰返し、得られた血清の精製と分析を行なっている。
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