実験は、研究実施計画に沿って行った。幼若Wister ratではPulsinelliらの手技による虚血モデル作製は困難なため、対象動物を生後3週雄スナネズミに変更した。また動脈圧、動脈血ガス分圧モニターは行わずに、虚血評価は組織学的検討のみとした。 実験の結果、以下のことが得られた。1.30分駆血群は生存例が得られなかったため、20分駆血に変更した。2.HE染色では、前脳の神経細胞および海馬錐体細胞は対照群を除く全例に同程度に虚血性変化を認めたが、細胞脱落は極めて少なかった。電顕でも各群で明らかな差はなかった。一方、各群で駆血からの経過時間が長くなるにつれて反応性アストロサイトが増加していた。3.抗GS抗体では各群で陽性細胞が出現し駆血時間、駆血からの経過時間の長くなるにつれて多く、強く認められた。4.抗GFAP抗体でも駆血時間の長い群が陽性細胞の出現が多く、駆血からの経過時間が長いほうが強く認められた。5.抗HSP72抗体では、各群で明らかな差はなかった。しかし、駆血からの経過時間が長いと少数陽性細胞が出現していた。6.抗NGF抗体では、陽性細胞はわずかに認められるのみで差はなかった。 幼若脳は神経細胞脱落が少なかったことから、比較的虚血に強いのかもしれない。免疫組織化学的には神経細胞に変化がみられ、形態学的変化よりも機能変化をきたしていることがわかった。しかし、アストロサイトの変化は駆血時間、駆血からの経過時間に依存して強くなり、神経細胞の変化よりも早期にアストロサイトが強く変化するものと考えられる。神経細胞の変化がみられない時期においても、アストロサイトのGS発現に違いがあり、GSmRNAではその発現の強度と神経細胞死の間に関係があるものと推察される。同一標本をIn situ hybridization法で検討し明らかにする必要がある。
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