研究概要 |
本研究は神経細胞の形態を決める機構を明らかにすることを目的としている。神経特異的な細胞骨格調節蛋白であるドレブリンが細胞内でどのような分子機構で神経細胞の形態変化にかかわるかを知るために、(1)先ずドレブリンの脳内及び、神経細胞内の局在を調べた。ドレブリンは嗅球と大脳皮質に多く存在し、他の部域、特に小脳皮質では少なかった。ポストエンベディング法による免疫電顕ではシナプス後部のスパインに局在していることがわかった。シナプトソームを調製し、ドレブリンの局在を調べると、ドレブリンはシナプス後部の細胞骨格に結合していた。(2)次に他蛋白との相互作用について調べた。大脳皮質から抗ドレブリン抗体-アガロースゲルに結合する蛋白を分画すると、ドレブリン、アクチンの他に220K、190K、130K、90Kの蛋白が存在した。前者3本はATPにより溶出されることと分子量とからそれぞれ、ミオシンII,ミオシンV,ミオシンIであると考えられた。90Kのバンドは抗ゲルゾリン-モノクロン抗体によってゲルゾリンであると同定された。MAP2、フォドリン、α-アクチニン、カルデスモン、ファシン、トロポミオシンは検出されなかった。(3)ドレブリンのアクトミオシンへの影響を調べるために、motility assayをおこなった。ドレブリンの過剰量存在下ではF-アクチンのミオシンに対する滑り速度は減少した。 シナプス伝達の可塑的変化に伴いspineやpostsynaptic densityに形態変化が起こることが報告されており、またspine中にはアクチンとミオシンが豊富に存在することがわかっている。ドレブリンはspine中でアクチン、ミオシン、ゲルゾリンとともに複合体を形成し、アクトミオシンの性質に影響を与えることによってシナプス構造の形態変化に基づいた神経の可塑的機能に関わっている可能性が示された。
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