研究概要 |
中枢神経系の代償的発芽現象の代表例として、前腕屈筋-伸筋支配神経交差縫合後のネコの赤核における側枝形成が報告されてきた。報告書で示される研究の最終目標は、中枢性側枝形成の物質的基礎を得ることにある。成熟ネコ5頭に対し、右上腕部近位側を開き、顕微鏡下で正中神経、尺骨神経と 骨神経を交差縫合した。処置後、3カ月以内にsacrifyした急性群と半年以上経過した後sacrifyした慢性群にわけた。対照群として、交差縫合をおこなわない健常成熟ネコ3頭も用意した。WGA-HRPにより投射赤核の存在するレベルを決定した後に、同レベルを対象として抗C-FOS,抗PKC(γ)(Protein kinase C type 1)を用いた免疫組織化学的検索を行い、交差縫合後のネコ赤核における、C-FOS,PKC(γ)(Protein kinase C type 1)の発現状態の検索を試みた。当初予測していた発現率の有意差は、急性群と慢性群ならびに健常群のいずれの群においても認められなかった。この事は、交差縫合後の側枝形成について、c-GMPを介したC-FOS,PKC系の細胞情報伝達系が関与している可能性が低いことを示唆する結果である。以上の結果より、今後は更に異なった細胞情報伝達系を側枝形成に関与する候補として検索するべきであるという方向性がえられた。
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