においの記憶の形成におけるノルアドレナリン系入力の重要性は行動学的には証明されている。ノルアドレナリン系入力が惹き起こす嗅球の神経活動の可塑的変化について検索した。 ノルアドレナリン作動性線維の主な起始核である青斑核から、多くの線維が嗅球に連絡していることが組織学的に証明されている。この青斑核をグルタミン酸注入によって刺激することにより、嗅球の電気活動に可塑的な変化が起きるか否かについて検討した。 雌ラットをウレタン麻酔下に脳定位固定装置に固定した状態で、実験操作を施す急性実験方式でおこなった。僧帽細胞の軸索束である外側嗅索を逆行性に電気刺激することによって嗅球顆粒細胞層において得られる陽性フィールドポテンシャルを観察した。電気刺激を2回行なう(20msec間隔)と、僧帽細胞と顆粒細胞間の樹状突起間シナプスを介する相反性相互作用によって、1回目の条件刺激に対する反応に比べ2回目の試験刺激に対する反応に抑制がかかる。この抑制率の変化は、すなわちそのシナプスの伝達効率の変化と考えられている。 樹状突起間相反性シナプスの伝達効率は青斑核の化学的な興奮の直後には低下するが、その後数分間はむしろ伝達効率の増強が持続した。この持続的変化と可塑性と関係については今後さらに詳細な検索が必要であろう。
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