研究概要 |
本研究実施計画に基づきマウスunc-18相同遺伝子の同定を試み、マウス脳cDNAライブラリーからunc-18相同蛋白質をコードする2種類のcDNAクローン(unc-18α,unc-18β)を単離することに成功した。unc-18αはアミノ酸配列全長にわたり64.7%,unc-18αは44.9%の相同性をもち、推定分子量、アミノ酸組成共、線虫UNC-18蛋白質と似通っていることが明らかになった。データベース検索を行った結果、unc-18α蛋白質は神経前終末膜に局在するsyntaxinの特異的結合蛋白質として同定されたラットMunc-18と同一の蛋白質であり、unc-18β蛋白質は末だ報告されていない新しいタイプのUNC-18アイソフォームであることが判明した。そこで我々は、これらの相同遺伝子をsynap(syntaxin associated protein)1,synap2と命名した。ノーザンブロット解析では、synap1は脳特異的に、synap2は脳、肝臓、腎臓、心臓、脾臓、筋肉、精巣など各組織で発現しており、組織発現特異性が異なることがわかった。マイクロインジェクションによる線虫unc-18突然特異体機能相補実験を行ったところ、synap1トランスジェニック線虫では表現型回復が認められたのに対し、synap2トランスジェニック線虫では回復は認められなかった。マウス相同遺伝子の発現特異性と機能回復実験からsynap1はunc-18に対する機能的相同遺伝子であり、synap2は機能的特性の異なる相同遺伝子であると考えられる。 最近の世界的な研究報告からsyntaxinは膜融合のターゲット膜蛋白質と考えられており、synap蛋白質同様、発現特異性の異なる複数のアイソフォームの存在が知られている。したがってsynap蛋白質ファミリーは特異的膜融合に関わる新しい細胞質性因子であると考えられる。
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