加齢にともない種々の免疫機能が低下することは良く知られているが、その機序は明らかではない。脾臓のNK活性は、脾臓交感神経の電気刺激によって低下することが報告されており、加齢により脾臓交感神経活動が亢進し、それによって脾臓のNK活性が低下する可能性が考えられる。本研究は、加齢にともなう脾臓NK活性の変化とその自律神経性機序を明らかにすることを目的とした。 実験にはハロセンで麻酔したラット(若齢:4ケ月齢、老齢:27ケ月齢)を用いた。気管に挿管し、人工呼吸により若齢ラットには約21%0_2を、老齢ラットには約23%O_2を吸入させ、両群のラットの動脈血中酸素分圧を約80mmHgに、二酸化炭素分圧を約20mmHgに保った状態で実験を行った。手術終了後1時間安静に保った後、脾臓を取り出し、YAC-1細胞を標的としたクロム放出法によりNK活性を測定した。エフェクター細胞と標的細胞の比(E/T比)が100:1から12.5:1の間で、NK活性(%lysis)には直線性が認められた。若齢ラット(6匹)では、E/T比が100:1のときにNK活性は25〜45%、平均33±3%であった。老齢ラット(2匹)では、NK活性は10および12%で、若齢群よりも低かった。老齢ラットにおけるNK活性の低下が、脾臓交感神経の緊張亢進によって起こっている可能性を明らかにするため、脾臓交感神経の切断実験を行った。脾臓交感神経の切断後、1時間安静に保ち、脾臓を取り出しNK活性を測定した。若齢ラット(6匹)では、NK活性は約平均35±2%で、交感神経無傷ラットとほぼ同じであった。老齢ラット(1匹)では、NK活性は18%で、交感神経無傷ラットよりもやや高い傾向がみられた。以上の結果より、老齢ラットでは脾臓のNK活性が低下しており、この低下には脾臓支配の交感神経の緊張亢進が関与している可能性が示唆された。
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