今年度、本研究課題に交付された補助金で実施された以下の研究により、スンクス扁桃でのリンパ球ホ-ミング機構と病巣感染症の病態との関連について次に示す新知見ガ明らかにされた。 1.正常スンクスのリンパ節よりリンパ球を分離し、それらを培養系で蛍光標識した後に静脈内移入した。その結果、スンクス扁桃においては濾胞周辺に位置し超微形態学的に高内皮細静脈の特徴を保有する血管を経由して標識リンパ球のホ-ミングが認められ、それらは経時的に濾胞を取り囲むパターンで組織内に分散した。このような標識リンパ球の動態はリンパ節、脾臓でも同様に認められ、スンクス扁桃は末梢性リンパ器官と同等のリンパ球ホ-ミング調節機構を備えていることが示唆された。 2.スンクスのリンパ球をモノクローナル抗体を用いてT細胞、B細胞に分離し、扁桃、リンパ節、パイエル板の凍結切片上でそれらのリンパ球とのWoodruff assayを行い、高内皮細静脈との接着特異性について検討した。その結果、扁桃の高内皮細静脈には粘膜系リンパ器官であるパイエル板と同様にB細胞が優位な接着を示した。しかしながら、末梢(非粘膜系)リンパ節に由来するリンパ球の接着はパイエル板に比し扁桃で有意に高く認められた。 スンクス扁桃において示された上記リンパ球ホ-ミングパターンから、同扁桃は解剖、組織学的には消化管に付随する粘膜系リンパ器官の特性を具備する一方で、末梢リンパ器官を循環するリンパ球も受け入れることで非粘膜系抗原にも応答する可能性が推察され、皮膚局所抗原の扁桃における交差反応性が発症機序のひとつとされる掌蹠膿疱症の病態と相関性をもつ知見が明らかにされた。
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