白内障、小眼球症自然発症ラットであるSC系およびTEC系の疾患原因遺伝子を解明することを目的として、以下の解析を行った。 まず、SC系およびTEC系の疾患原因遺伝子が同一遺伝子座に由来するか否かを検討するため、SC系とTEC系の間の交配実験を行った。その結果、SC系とTEC系の間のF_1にて小眼球症個体が出現し、小眼球症個体、白内障個体、正常個体の出現頻度が、ホモで小眼球症、ヘテロで白内障が出現すると仮定したときの理論値と有意に異ならないことから、SC系の原因遺伝子とTEC系の原因遺伝子は、同一遺伝子座の対立遺伝子であることが強く示唆された。 次に、SC系およびTEC系の疾患原因遺伝子の染色体上の位置を明らかとするために、SC系とIS系およびTEC系とNIGIII系の交配により戻し交配個体を得、各個体の表現型を判別した上で、組織よりDNAを抽出した。連鎖解析のためのマーカー遺伝子として、単純反復配列よりなるマイクロサテライトマーカー遺伝子を用いた。これまでの研究により、これらのマイクロサテライトマーカー遺伝子よりなるラット染色体の連鎖地図がすでに作成されている。各戻し交配個体に由来するDNAについて、PCR法により各マイクロサテライトマーカー遺伝子のタイピングを行った。これまでのところ、ラットの第1および第3染色体上のいくつかのマーカー遺伝子についてタイピングを行ったが、いずれもSC系およびTEC系の疾患原因遺伝子との有為な連鎖は認められなかった。今後さらに多くのマイクロサテライトマーカー遺伝子についてタイピングを行い、疾患原因遺伝子の染色体上の位置を明らかにする予定である。
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