研究概要 |
1.体内埋込み型モータ駆動補助人工心臓システムの監視・支援システムの実現に向け、光通信機能を内蔵した高性能な体内埋込み型駆動制御システムを試作した。本研究の駆動制御システムは,小型ながら高いデータ処理能力を有するよう16bit(NEC,V25)と8bit(HITACHI,HD64130)の1チップマイクロコンピュータ(MCU)を中心に構成した。制御系の演算および通信の管理は16bitMCUにより,またモータ回転角度・回転速度の検出は8bitMCUによりそれぞれ処理を行っている。経皮的光通信は,生体組織透過性の高い近赤外光を応用し,体内の駆動制御システムと体外に置くホストコンピュータとの間で半2重双方向通信を行い(伝送速度:9600bps),体内に埋め込まれたモータ駆動補助人工心臓の駆動状態情報の体外ホストコンピュータでの取得,および体内駆動制御システムへのモータ駆動補助人工心臓駆動条件(駆動モード(固定レートモードor full-fill full-emptyモード・ポンプ一回拍出量,ポンプ拍動数)の設定を行う。経皮的光通信は,1チップマイクロコンピュータのシリアル通信信号をパルス変調することにより行っている。駆動制御システムの大きさは縦110×横100×高さ40mmで,消費電力1.1Wattsである。 2.経皮的光通信により体内から送られてくるモータ回転角度とモータ電流より,ポンプ拍出量,最高血圧,平均血圧の推定を行った。ポンプ拍出量の推定はモータ回転角度の移動変位より,最高血圧はピークモータ電流からモータ最高発生出力を計算することにより算出した。また平均血圧は,ポンプ拍出1行程の平均電流との相関より推定した。 3.開発したシステムをin vitro実験により評価したところ,経皮的光通信機能により体外から体内側のモータ駆動補助人工心臓の駆動条件の変更ならびに,体内駆動情報の体外での取得を行うことができた。また,体内駆動情報から算出したポンプ拍出量と動脈圧は実測した値とほぼ一致し,良好に生体の循環状態を推定することができた。 以上より,本研究の光通信機能を内蔵した高性能機能制御システムは体内埋込み型モータ駆動補助人工心臓システムの監視・支援システム実現に大きく貢献するものと考えられる。
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