研究概要 |
ポリ(L-ラクチド)(M_v=4.0×10^5)を塩化メチレンに溶解し、キャストすることにより得たフィルムを減圧下にて以下の3つのプログラムで熱処理した。Process A:そのまま、任意の温度(T_a)および時間(t_a)で結晶化させる。Process B:200℃で3分間融解後、任意のT_aおよびt_aで結晶化させる。Process C:200℃で3分間融解後、0℃にてquenchし、T_aおよびt_aで結晶化させる。以下では、以上の処理を行ったフィルムを順にFilm A,Film B,およびFilm Cと名付け、DSC測定と偏光顕微鏡観察を行った。得られた結果は、以下の通りである。 Film BとCは球晶から構成されているが、Cの場合はquenchingの際に高密度の球晶核ができるためにFilm Cに比べて球晶半径が小さい。Film Bでは、T_aを高くすると球晶半径が増大した。Film Cでは、quenchingの際に高密度の球晶核ができるため全体の結晶化はt_aが10分以内で終了した。これらの結果よりフィルムのモルホロジーは、Process、T_a、およびt_aにより制御できることが明らかとなった。 力学特性のprocess依存性は小さく、熱処理を行った試料の強度および弾性率は、as-castフィルムまたはmelt-quenchしたフィルムよりも高くなった。また、Film BとC間にはモルホロジー的には差異が認められるが、熱的・力学的特性にはほとんど差異が認められなかった。しかし、Film Bで半径の大きな球晶が生成する場合には、力学的強度低下が認められた。Film A,Film B,およびFilm Cの平衡融点は、それぞれ、181,211,及び212℃であった。Film Aの場合には、castingの際に形成された構造の熱処理による再構築は困難であった。 以上の結果より、モルホロジー、結晶サイズ、および結晶化度については、Process、T_a、およびt_aを変えることにより厳密な制御が可能であることが明らかとなった。現在、作成した試料のin vitro分解試験を行っている。
|